●「私もありました」とメールが
以前に「断る技術」(断り方、話の切り方)についてここで書いたところ、直後も最近もご相談メールが届きます。
やっぱり「断る」場面で苦労している方は多いですね。
大人のコミュニケーションで本当に大事なスキルは、盛り上がるより「トラブルを避ける」ほうです。こちらのほうが重要度も緊急度も高い。
以前に、取引先の会社の人から食事に誘われて、「そういうのはちょっと……」と断った(つもりだった)のに、「まあまあ今後のお付き合いにも悪いようにはしないから。もう予約を入れたから今回だけ」みたいに強引で、仕方なく応じてしまった、と後悔していたというケースを取り上げましたね。
するとほかにも何通か、「すごくわかります」「断るのが申し訳ないような流れを作られてしまって……」「断る技術を先に教わりたかった」といったメールが届きました。
確かに、断り方が下手だったせいで、不適切な行動が生じた、美しくない振る舞いをした、という見方もできますね。
ただ、まあここからはカウンセリングレベルの話になってきますが、断り方は「言い方」だけの問題ではありません。
本人の損得勘定だとか保身だとかといった欲得ずくの選択であるケースも少なくない。
あまり褒められた行動ではないとわかっていながら、
「断ってゴタゴタするのは嫌だな」
「応じておけば今後の取引で色をつけてくれるかな」
「食事くらいならまあ大したことじゃないし、うまくやればライバルを出し抜けるかも」
「今回だけ引き受けて恩を売っておくといいかな」
「強い調子で断ると後々まずいかな」
などと自分を納得させたりして、時には自分から進んで乗っていくケースも。
癒着だとか不適切な関係などは、まさにこうした意識から生じるんですよね。
後味が悪いことや、後ろめたさが残るようなことに時間を使うのは、意識がもったいない。
年齢を重ねれば重ねるほど、大事なことに集中してエネルギーを注ぐのがいい。美しい行動を積み重ねたい。
だらだらと惰性で関わるばかりがコミュニケーションではない、ということですね。
澄んだ気持ちいい毎日を手に入れるためにこそ、断る技術は役に立ちます。
文章の書き方講座(春の講座)では、今は「論理」にしっかり取り組んでいますが、次回は「断り方」も取り上げる予定です。
お楽しみに。
【オンライン文章講座】(春の講座)
日時:2023年5月27日(土)15:00~20:00頃
料金:10,000円(税込)
会場:自宅でオンライン受講
講師:齋藤匡章(言語戦略研究所)
内容:言葉をもっと深く、もっと適切に使う論理力を身につけよう……断り方にも方法がある
文章力は、一生にわたって役に立つ技能です。誰でもタダで平等に使える「言葉」という道具ですが、だからこそ一人一人の言葉の力によって差がつきます。仕事で言葉を使う場面が多い方は、この講座で言語能力を高めて、周囲のみなさまのお役に立ってあげてください。
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